悪役教師は、平和な学校生活を送りたい
「……はぁ!? もう一回言ってみなさいよ、この色ボケ男!」
「おーおー、何度でも言ってやりますよ、ツェツィーリエ嬢? おまえはあまりにも苛烈すぎて、ダンスしてくれる男が逃げるんじゃないか? ……ほら、満足か?」
「こ、このっ……!」

 今日もまた、元気に喧嘩をしていた。

(今回のネタは……新年祭のダンスパーティーね)

 もうすぐ十二月が終わり、新年を迎える。
 一月一日はアドルマイア王国各地で様々な催し物が行われる中、スートニエ魔法学校でも多くの生徒たちが楽しみにする新年祭が開かれる。

 いつも通りのリュディガーとツェツィーリエの口論だが、周りの生徒たちがこちらを見て「放っておけばいいですよ」と身振り手振りで示したので、両者がクールダウンするのを教卓で待つことにした。

(そういえばゲームにも、新年祭イベントがあったっけ。一年生ももうすぐ終わるという時期で、このイベントを節目に恋愛対象キャラのルートが解禁されることになる……)

 新年祭ダンスパーティーでは、攻略対象を誘ったり逆に誘われたりする。これで好感度もぐっと上がるし翌日から個別恋愛ルートを決められるようになるので、ディアナもよく覚えていた。

(……あれ? そういえばまだ、ヒロインの話を全く聞かないわね……?)

 確かヒロインは一年生として魔法学校に入学する約半年前に予言者と出会い、光属性の力を持つことが判明する。そこからとんとん拍子に話が進み、奨学金をたんまりもらったヒロインは無事に入学することになるのだ。

(もう真冬だし、職員室でヒロインの噂くらい流れていそうなものだけど……校長のところでストップされているのかな?)

 あの校長の性格を考えると、「レアな光属性の生徒が入学する!」と騒ぎそうなものではあるが。

 考え事をしている間に、リュディガーとツェツィーリエの喧嘩は終わったようだ。
 リュディガーが勝ち誇った顔をしていることから彼の勝利らしく、へそを曲げたツェツィーリエは隣の席のエーリカに慰められ、ルッツはおろおろしていて、レーネは我関せずの様子で、エルヴィンは頭から上着を被った格好で突っ伏して寝ていた。
 ある意味いつも通りの補講クラスの風景である。

「……えーっと、さっきの喧嘩について何か心残りなことはありますか?」
「ありませんっ! お話をどうぞ、先生!」

 そっぽを向いたままツェツィーリエが言ったため、リュディガーが噴き出した。
「あまりからかうものではありません」とリュディガーを注意したら、なぜかにこにこ笑顔で「了解、先生」と素直に返事をした。
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