悪役教師は、平和な学校生活を送りたい
(さて、そろそろ見回りに行かないと)
ほとんどの生徒がホールに入ったところで、ディアナは毛皮の上着を着てカンテラを手に玄関ホールに向かった。
そこには、同じように防寒対策ばっちりのフェルディナントがいた。
「こんばんは、イステル先生。いい夜だね」
「こんばんは、アルノルト先生。寒いですが、星がきれいに見えますね」
フェルディナントはディアナからカンテラを受け取り、柔和に微笑んだ。
「そうだね。こんなにいい夜を君とご一緒できて、僕は嬉しいよ」
「ええ。……不純異性交遊をする生徒探しという目的じゃなければ、もっとロマンチックだったかもしれませんね」
「そうだねー。まあ、何も見つからないことを祈るよ」
そう言ってフェルディナントはディアナの手を取り、歩き出した。
まだダンスパーティーは始まったばかりだが、油断大敵。
数年前にはこのパーティー開始直後から既に会場を抜け出している生徒がいたそうだ。空き教室にいる二人を教師が発見したときには、女子生徒のドレスは既に半分脱がされていたという。
(……まあ、生徒は十七歳とか十八歳なんだから、恋に燃え上がる気持ち自体は否定できないけどね……)
やるなら卒業後にしてほしい、というのがディアナの気持ちだ。
廊下には魔法の明かりは灯っているが、人気のない通路は寒々としており物寂しい。
ホール付近は魔法で暖かくしているので女子生徒も薄手のドレスを着ていたが、このあたりは省エネされているのかコートを着ていても肌寒かった。
「いつも昼間に通るときとは、全然違った雰囲気に思われますよね……」
「そうだね。……イステル先生、知ってる? この学校には七不思議があるんだよ」
学校の七不思議。
日本製ソシャゲの世界だからか、こういう言葉も浸透しているようだ。
「いえ、初耳です。……あ、あの、怖い系とかエグい系はちょっと聞きたくないです……」
「あはは、大丈夫大丈夫。ちょっとゾクッとするのもあるけれど全部謎が解明しているものばかりで、最後のオチを聞いたらむしろ笑い話になるものばかりなんだ」
「なんだ、そうなんですね」
そうしてフェルディナントが語ってくれた七不思議は、確かにどれも最初聞いただけではゾクッとするが、ネタばらしをされると笑えるものばかりだった。
「えーっ! それじゃあその不思議って、当時の副校長先生が自分の部屋のベランダから干していたシーツが、首吊り死体に見えただけってことですか!?」
「そういうこと! まさか副校長先生も、自分の洗濯物で亡霊騒動になっているなんて露ほども思っていなくて、なかなか解決しなかったってことさ」
「なるほど!」
話をしながら歩いていると、薄暗い廊下を歩くのも怖くなかった。
ほとんどの生徒がホールに入ったところで、ディアナは毛皮の上着を着てカンテラを手に玄関ホールに向かった。
そこには、同じように防寒対策ばっちりのフェルディナントがいた。
「こんばんは、イステル先生。いい夜だね」
「こんばんは、アルノルト先生。寒いですが、星がきれいに見えますね」
フェルディナントはディアナからカンテラを受け取り、柔和に微笑んだ。
「そうだね。こんなにいい夜を君とご一緒できて、僕は嬉しいよ」
「ええ。……不純異性交遊をする生徒探しという目的じゃなければ、もっとロマンチックだったかもしれませんね」
「そうだねー。まあ、何も見つからないことを祈るよ」
そう言ってフェルディナントはディアナの手を取り、歩き出した。
まだダンスパーティーは始まったばかりだが、油断大敵。
数年前にはこのパーティー開始直後から既に会場を抜け出している生徒がいたそうだ。空き教室にいる二人を教師が発見したときには、女子生徒のドレスは既に半分脱がされていたという。
(……まあ、生徒は十七歳とか十八歳なんだから、恋に燃え上がる気持ち自体は否定できないけどね……)
やるなら卒業後にしてほしい、というのがディアナの気持ちだ。
廊下には魔法の明かりは灯っているが、人気のない通路は寒々としており物寂しい。
ホール付近は魔法で暖かくしているので女子生徒も薄手のドレスを着ていたが、このあたりは省エネされているのかコートを着ていても肌寒かった。
「いつも昼間に通るときとは、全然違った雰囲気に思われますよね……」
「そうだね。……イステル先生、知ってる? この学校には七不思議があるんだよ」
学校の七不思議。
日本製ソシャゲの世界だからか、こういう言葉も浸透しているようだ。
「いえ、初耳です。……あ、あの、怖い系とかエグい系はちょっと聞きたくないです……」
「あはは、大丈夫大丈夫。ちょっとゾクッとするのもあるけれど全部謎が解明しているものばかりで、最後のオチを聞いたらむしろ笑い話になるものばかりなんだ」
「なんだ、そうなんですね」
そうしてフェルディナントが語ってくれた七不思議は、確かにどれも最初聞いただけではゾクッとするが、ネタばらしをされると笑えるものばかりだった。
「えーっ! それじゃあその不思議って、当時の副校長先生が自分の部屋のベランダから干していたシーツが、首吊り死体に見えただけってことですか!?」
「そういうこと! まさか副校長先生も、自分の洗濯物で亡霊騒動になっているなんて露ほども思っていなくて、なかなか解決しなかったってことさ」
「なるほど!」
話をしながら歩いていると、薄暗い廊下を歩くのも怖くなかった。