悪役教師は、平和な学校生活を送りたい
「むしろ、あなたがこうして私を責めなければ、他の皆が余計に心を苦しめるだけだったでしょう。あなたが皆の困惑や疑問を背負って、私にぶつけてくれた。それで……よかったと思います」
「先生……」
「皆にも、きちんと話をします。……それに、校長にも」
「やめとけよ。元々生徒には明かさないことになっていた話だろう」
「でも、何らかの理由であなたたちに噂として届いてしまい、それを私が認めたというのは事実です」

 ……強気に言うが、本当は体の芯まで震えていた。

 怖くて、不安で、逃げ出したいくらい。

 だがディアナがここで逃げれば、全ての皺が生徒たちに寄せられる。
 それは……もっと嫌だった。

 リュディガーは難しい顔で黙っていたが、やがて「……分かった」と頷いた。

「おまえがそう言うのなら、そうしてくれればいい」
「……はい」
「……ったく。時と場合が違えばオレがおまえと一緒に校長室に行くし、怖いのならいくらでも抱きしめてやるんだけどな……」
「それは大丈夫です」

 校長に報告せねばならない案件を増やすのだけは、御免被りたい。

 だが今のやり取りでリュディガーは普段の調子を取り戻したらしく、ふっと笑った。

「……よし。んじゃあそろそろ皆を集めようぜ。エーリカも、だいぶ落ち着いたんじゃないか」
「……そうですね」

 そうだといい、と心から思った。
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