悪役教師は、平和な学校生活を送りたい

ディアナの危機?

 他の教師たちの助力も得ることができて、補講クラスでは順調に試験の準備が進められていた。

 あの後ディアナはエーリカともきちんと話をして、「全員の進級を望んでいる」ということを理解してもらえた。
 エーリカの方もツェツィーリエやルッツに話を聞いてもらったらしく、「頑張ります」と真っ直ぐな目で言ってくれた。

 そうして、真冬の寒さも明けて少しずつ春の陽気が見えるようになった、三月。

(いよいよ明日が、進級試験……)

 教室の窓から訓練場を見ながら、ディアナは思う。
 一度は学級崩壊の危機にも面した補講クラスだが、多くの人の助力を得てここまでやってこられた。

(もし全員合格したら、補講クラスそのものがなくなるかもしれない。そうなると、もうこの教室を使うこともなくなる……)

 そもそもこの教室は補講クラスの生徒たちの自習部屋のような扱いなので、補講クラスがなくなったらここを教室にする必要はなくなる。
 それはそれで寂しくもあるが、皆が進級できるというのが一番だ。

 普通、教師たちが試験問題を準備して採点もするが、ここにディアナは加われない。今のディアナは講師で、補講クラスの生徒たちだけの面倒を見ているという立場だからだ。

(もし私も無事に正式採用されて、魔法実技の教師になれたら……また違った立場で皆と接することになるんだろうね)

 そうなると六人だけではなくて、生徒全体に対して授業をすることになる。大人数の前で授業をするのは前世ぶりだが、やはり多くの生徒たちに教えたいところだ。

 しばらく待っていると、本日最後の授業を終えた生徒たちが教室にやって来た。

「ただいまー、先生。今日もばっちりだったわよ」
「聞いてくださいまし、先生。明日の試験に向けた最終試合で、わたくしたち全員相手に勝ちましたの!」
「よ、よかったね、ツェツィーリエさん。最後の雷魔法、すごく格好よかったよ」
「うんうん、みんなもびっくりしていたものね」
「ま、一番びっくりしていたのは当の本人のツェツィーリエみたいだがな」
「いちいちうるさいわね、リュディガー! エルヴィン、あなたもあくびなんてしていないでリュディガーをいさめなさい!」
「いや俺、関係ないし……」

 今日も六人は賑やかだ。
 ……だが、試験を前にして少し、空元気を出しているのではとも思われた。
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