悪役教師は、平和な学校生活を送りたい
「……。……明日、試験ですね」
「そうですね。……頑張ってくださいね」
「もちろん。俺、進級する気満々なので。それにあんたに、合格通知を渡したいから」

 エルヴィンが笑顔で言うので、ディアナは頷いた。

「ええ、楽しみにしています」
「……。あのさ、先生。先生は……俺たちが二年生になっても、授業に来てくれるんですか?」
「え? ……そうですね。来年度のことは分からないけれど、できれば一緒に進級したいです」

 現在のスートニエ魔法学校には、魔法実技の教師がディアナ以外に二人いる。一応、二人がそれぞれ一学年ずつ担当しているが授業では二人が一緒に指導していることが多い。

(でもそういえば、今一年生をメインに担当している先生はもうすぐ引退するとおっしゃっていたっけ……)

 となるとそこにするっとディアナが入ることも十分考えられるが、まだ先のことは分からない。

「少なくとも、私はここに残りますよ」
「……そう、ですね。俺たち全員が合格すれば、あんたも正式採用されるんですしね」
「ええ。できればあなたたちの卒業まで付き添いたいと思っています」
「……そっか。ありがとう、先生」
「まだ分からないですけれどね」

 ディアナは言い、だんだん夜の色に変わりつつある空を見上げた。

「……そろそろ中に入りましょうか。あなたも、早めに休んだ方がいいですよ」
「そうします。……明日は皆で頑張って、校長の鼻を明かしてやりますからね」
「ふふ……ええ。楽しみにしていますよ」

 ディアナが笑うと、エルヴィンも頬を緩めて微笑んだ。
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