真夏、蝉、氷菓子、君の声
「おばあちゃん、俺のこと見えたのかな」
「さあ。そうかもね」

階段を上がる。自分の部屋にたどりついて、ふすまを開ける。手にはアイス。

「さすがに、毎日アイスが2本ずつ減っていったら、思うところもあるでしょう」

アイスを手渡した。祖母がエアコンをつけておいてくれたようで、部屋は涼しい。
「そうだな。見えたわけじゃ、ないか。寂しいな」

アイスをしゃりっとかむ。
せみの声が、うるさかった。




「危介なものに、つかれたなー」
「おかげ様で少し、困っています」

担任は、物理室のいすに座って、たばこをふかしていた。

「おはらい、頼んだら?」
「はらわれてくれると思いますか?」
「そうだな....やめておけ。死人が出る」

背後の男は、私にべたりと抱きついた。

「かーほ。早く戻ろうぜ。じゃないと俺、そいつのこと消すかも」
「冗談はやめて。それに、物理の先生がいなくなると、困る」
「夏帆子と仲よくする男は、全員殺す」
「真っ先に自分で自分を殺すことになりそうだけど」

手にもっていたノートの山を、先生に渡す。

「どうぞ。提出物です」
「へいへい。確かに——————関口」
「はい?」

先生は、真剣な声音で言う。

「あんまり深入りするなよ。怪異ってのは」
「気まぐれ。残酷。..…知っています」

扉を閉じた。
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