御曹司からの愛を過剰摂取したらお別れするのが辛くなります!
 十一時五十分、友人が着いたと連絡があり、碧唯さんはマンションのエントランスまで迎えに行った。私は気合いの入った料理をテーブルに並べ、ドキドキしながら待つ。

 私たちはまだ挙式をしていない。碧唯さんのご両親のスケジュールにより、三ヶ月後の九月に式場の予約がしてある。そのため、碧唯さんの友人と会うのは今日が初めてである。

「は、初めまして……! 妻の凜々子です」
 玄関のドアが開くと真っ先に挨拶をする。碧唯さんの友人は五人来て、男性三人と女性が二人だった。

「凜々子ちゃん、初めまして。碧唯の中学時代からの友達の片岡(かたおか)です。こっちは彼女の紗奈(さな)です」
 まず初めに黒縁眼鏡イケメンの男性と髪型が茶髪ボブの可愛い女性が挨拶してくれた。碧唯さんの友人たちはみんな素敵な方々で次々と挨拶してくれる。最後に挨拶してくれたのは……。

「貴方が碧唯の“妻”なのね。私は、みちる。碧唯とはとても仲良しなんだぁ」
 そうアピールしてきた女性は黒髪ロングのすらっとしたモデル体型の綺麗な方だったが、私はゾクッと身震いしてしまう。綺麗だけれど目が笑ってなく、声も低くて、私を見下すような視線を送ってきたことに気づいたから。

「碧唯、結婚祝いにケータリングを頼んだのよ。十二時半にお願いしてあるから、一緒にエントランスまで来てもらえないかな?」
 みちるさんという女性は、碧唯さんに甘い声を出して馴れ馴れしい感じで話しかけている。友人という枠を超えているような、そんな危機感を抱いてしまう。

「凜々子が料理を手作りするって言ってあっただろ? だから、何も用意しなくていいって……」
「うん、知ってるよ。でもさ、お祝いしたかったし、全員で七人もいるんだから、足りないくらいだよ!」
 碧唯さんは、みちるさんに上手く丸め込まれて一緒にエントランスへ向かった。私は知らない人たちの中に一人で取り残される。

 碧唯さんの友人たちをテーブル席に案内して、とりあえず座ってもらい、ドリンクをお伺いした。
「これ全部、凜々子さんが作ったの?」
「碧唯、幸せ者だなぁ」
 友人たちは、テーブルに並んでいる料理を褒めてくれた。テーブルにはローストビーフ、カナッペ、キッシュ、ミートローフ、イタリアンサラダなど、自分が自信を持ってお客様に出せるメニューが並んでいる。
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