御曹司からの愛を過剰摂取したらお別れするのが辛くなります!
「やだ、胸がキツーイ!」
 みちるさんは私が貸したワンピースを着たが、どうやら胸元がキツイらしい。姿見で全身を映しながら、パツパツとした胸元を平均サイズの胸の私にアピールしてくる。

「私、結局ね、縁談お断りしたの。もしかしたら、碧唯との復縁もあるかもって思ってたから」
 脱いだままで床に置いてあったワンピースを拾い上げたみちるさんは、私に「はい、コレ今すぐクリーニングね」と言いながら差し出した。私は無言です受け取り、頭を軽く下げる。

「立派な経営者には愛人も一人くらいいたっておかしくないでしょ。だから、碧唯がその気なら私はいつでも愛人になるから。よろしくね!」
 私は何も答えることなんてできないが、碧唯さんはみちるさんのことを今でも想っているから、私とは入籍しないことにしたことが分かってスッキリした。碧唯さんが幸せになるために、私は挙式前にはお別れした方が良さそうだよね?

 みちるさんは先に部屋から出て行き、私は床に散らばった洋服を拾い上げる。碧唯さんのことなんて好きじゃないはずなのに、涙がとめどなく溢れてしまい、床にポロポロと落ちていく。

 切なくて胸が苦しいから?
 それとも悔し涙?
 自分でも感情がぐじゃぐじゃに混在しているせいで分からず、ただひたすら涙が溢れてしまうだけだった。

 私は泣くだけ泣いて、メイクをし直してからクリーニングに出すことを碧唯さんに伝えてからマンションの外に出た。碧唯さんからはあとにしろと言われたけれど、私はあの場所にも居ずらくて気分転換もしたかったた。すると紗奈さんに着いてきてくれて、泣いていたことがバレてしまう。

 紗奈さん曰く、みちるさんは碧唯さんのことが大好きで、別れても諦められないのだそう。

 紗奈さんになら碧唯さんとのことを打ち明けても良いと思ったのだが、彼自身の問題もあるだろうからと思い直し、自分の心の内だけに秘めておくことにした。
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