御曹司からの愛を過剰摂取したらお別れするのが辛くなります!
「単刀直入に聞きますけど、碧唯さんは手作り料理よりも外食やできあいのお惣菜とかの方が好きなんですか?」
 こんなことを正直に聞いて碧唯さんに嫌われても仕方がない。しかし、これから結婚生活をやり直すというならば私たちにとっては必要なこと。

「誰がそんなことを言ってた? また、みちるか?」
 碧唯さんは呆れたように聞き返し、溜め息を吐く。私は何も発さずに頷く。

「手作り料理が嫌いなわけじゃない。大学時代、母が一人暮らししているマンションまで押しかけてきて、作り置きのおかずを冷蔵庫にたくさん入れていた」
「碧唯さんのお母様、マメなんですね」
「料理ができないからありがたい気持ちもあったけど、大学生だから遊びたい気持ちもあって……減らさないと友達と外食できないし、うんざりした時期はあった」
 言葉には出さないけれど、碧唯さんは作り置きのおかずを粗末にすることなく食べていたのだろう。話の内容から、そう感じ取れる。

「そして、その話と上手く絡み合わせて、みちるは全く料理ができないから、凜々子がうらやましくて意地悪を言ったんだろう」
「そういうものですかね……」
「そういうものだよ」

 碧唯さんはみちるさんの性格も知った上で、私に事情を説明してくれた。めんどくさい女かもしれないが私にとって、みちるさんの存在は脅威なのだ。何故なら一度は碧唯さんが愛した女性で、彼が彼女のことを知り尽くしているかのように理解しているから。
 私は認めるのが怖いけれど、ただ単にヤキモチを妬いているのかもしれない。

「あ、碧唯さん……! な、何? え? ちょ、ちょっと待ってください!」
「待たない」
 碧唯さんは私が気持ち的に沈んでいることに気付いたのか、突然として背後から抱きしめてきた。

「凜々子に拒まれないと分かったから、俺はもうブレーキはかけない」
「で、でも……!」
 碧唯さんの温もりが背中から伝わってくる。昨日まではベッドに入ってからは会話もあまりなくて、お互いに背中を向けて寝るだけの生活だったのに……。
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