御曹司からの愛を過剰摂取したらお別れするのが辛くなります!
 碧唯さんの鍛えられた細身の筋肉質の胸板に顔を埋めると、耳元から心臓の音が規則正しく聞こえてきた。耳触りの良い心地好い音で、もうひと眠りできそう……。
 今まで何もなかったのに対して、今日一日で私と碧唯さんの関係性は目まぐるしく変化した。

「ね、寝るんですよね?」
「……うん、もうひと眠りするけど」
 碧唯さんの指先は、もうひと眠りと言っている割には私の素肌を触っている。
「凜々子の肌はすべすべでずっと触っていたい」

 背中をなでなでしながら、私のことをぎゅっと抱きしめてくる。私も恐る恐る碧唯さんの背中に手を回す。
 もう遠慮なく、碧唯さんに触れても大丈夫なんだよね? 昨晩、抱かれたのにまだ半信半疑のままだ。

「おはよう、凜々子」
 もうひと眠りして起きたら、隣に碧唯さんの姿はなかった。時計を見ると三時間はゆうに経過していたようだ。十時近くになっていたので朝食の準備をしなくては……と慌ててキッチンへと向かう。すると、ダイニングテーブルには朝食が並んでいた。

「お、おはようございます。これ、碧唯さんが……」
「そう。焦げてしまってごめん……」
「いえ、ありがとうございます! 美味しそうです」
 少し焦げてしまったハムエッグに解凍されてふわふわのロールパン、レタス、きゅうりとトマトのサラダ。

「洗顔してきてすぐに戻ります」
 碧唯さんは朝寝坊した私の代わりに朝食を用意してくれて、目覚めのコーヒーを飲みながらスマホを眺めていた。起きてこなかった私への気遣いがとても嬉しくて、浮き足立ってしまう。

 私は洗面台で顔を洗おうとして腰を曲げると、重だるい下半身に鈍痛が走る。碧唯さんに初めてだかれたという、喜ばしい痛みである。改めて鏡で見ると、首元にも赤い蕾がつけられていた。
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