御曹司からの愛を過剰摂取したらお別れするのが辛くなります!
「碧唯さん……! く、首元まで……!」
 私は首元を左手で抑えながら、リビングで碧唯さんに訴える。
「あぁ。つい、凜々子が可愛くて夢中になりすぎた」
 結婚指輪を探しに行くと約束していたが、首元から赤い蕾が見えてしまうのが恥ずかしい。

「今度からは、首元にはつけないように気をつける」
 しれっと社交辞令のように謝った碧唯さんは自分のことではないので、素っ気ない感じの態度をとる。

「出かける時、どうしたら……」
「首元まで隠せる服装にしたら?」
 碧唯さんは他人事みたいに簡単に言うけれど、夏服でハイネックのようなものを所有していたかな?

「分かりました、探してみますね」
 今、考えても仕方がないので後回しにする。
 私はリビングの椅子に座り、「いただきます」を言ってから箸を持ち上げた。

「目玉焼きは半熟で美味しいですよ」
 少し焦げ目はあるが、苦くて食べられないほどではなく許容範囲だ。
「いつも凜々子が料理をしてくれてるから、久しぶりに作った。俺は簡単なものもまともにできないから、凜々子に感謝してるよ」
「……ありがとうございます」

 昨日の夜から碧唯さんの甘さが急に増したので、私は褒められ慣れてなくて対応に困る。何だか、くすぐったい感じがする。

 素っ気のなかった碧唯さんが急変し、私たちの関係性も変化しつつ、起きたら朝食まで用意されていた。ご褒美がたくさんあって、私は自分の身に何かが起きるのでは? と心配になる。

「……入籍は凜々子の好きなタイミングで行くことにしようか」
「え?」
「凜々子が本当に俺で良いのか、品定めしてからでも遅くないだろ?」
 昨晩、身体を重ねるのが初めての私を抱いといて、どの口がそんなことを言っているのか。ひっくり返せば、碧唯さん自身が踏ん切りがつかないということなのか?
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