御曹司からの愛を過剰摂取したらお別れするのが辛くなります!
 バツ悪そうに私をチラッと見てから、目を逸らした碧唯さん。私は“ハンバーグにはチーズと目玉焼き”と記憶する。きっと碧唯さんのお母さんが作ってくれるハンバーグには、そのトッピングが乗っていたんだろうな。想像すると微笑ましい。
 私たちはそれぞれ好きなハンバーグをオーダーした。

「俺のも食べてみるか?」
「私のも食べますか?」
 ハンバーグが届くと私たちは少しずつナイフで切り分けて交換をした。碧唯さんからは、ハンバーグの他に目玉焼きとソーセージも取り分けられた。

「こんなにいただいてしまったら、碧唯さんの分が少なくなってしまいますよ? もう少し私の分をあげます」
「いや、いい。凜々子がちゃんと食べなさい」

 私の鉄板の上にはオーダーした和風おろしハンバーグ以上の量が乗っている。他にサラダとスープ、ライスもある。
「ありがとうございます」

 私は食べることが大好きだから、このくらいの量はきっとペロリとたいらげてしまう自信はある。しかし、碧唯さんの前で食べることは恥ずかしい。大食いだと思われたくない。

「いい食べっぷりだな」
 碧唯さんは少しだけ表情筋がゆるんだ顔で私を見ている。
「え? あ、すみません……」
「謝ることはない。本当は全部食べられるくせに気取って残す女より、よっぽどいい」
 私は指摘されて恥ずかしくなりフォークを置こうとした時、碧唯さんはほんのわずかだが笑う。

「私……美味しいものも、食べるのも好きなんです。家柄は悪くないと思うのですが、私自身が品位を下げているんです。本当にすみません」
「何故謝るんだ? 食べることは人間の本能なのだから気にするな。それに品位を下げていることなどない」
 碧唯さんはそう言った後、自分の鉄板に残っていたハンバーグ等を綺麗に食べ終える。
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