御曹司からの愛を過剰摂取したらお別れするのが辛くなります!
「好きなものを買っていいと言ったくせに、買ってくれなかったと陰口を叩かれても困るからな」
「そんなことはしませんよ」
 中身が入っていないと姿を表さないタイプだが、碧唯さんなりに妥協して選んでくれたのだろう。子供じみた私に合わせてくれるなんて、大人の対応すぎる。

「部屋が殺風景すぎるから、観葉植物でも置くか……」
 通りすがりの花屋で苔玉を見つけた碧唯さんは、興味を持ったみたいでじっと眺めている。

「苔玉、可愛いですよね。パキラとかは育てやすそうじゃないですか?」
「じゃあ、パキラにしよう」
 苔玉の植物と受け皿はいくつか種類がある。受け皿は星型などもあったが、シンプルな白くて丸いタイプにした。

「本当は大きい観葉植物でも置けばいいのかもしれないが、管理が大変だからやめとく」
「私が育てましょうか?」
「……考えとく」
 私は専業主婦になって自宅に常に居るのだから、任せてくれれば良いのに。私じゃ頼りないのかな。

「あとはどこのショップが見たい?」
 少しだけシュンとしている私を見下ろしながら、碧唯さんは聞いてきた。

「そうですね……。碧唯さんはコーヒー派ですか? 紅茶派ですか?」
「どちらも飲むが、どちらかと言うとコーヒーだな」
「じゃあ、紅茶とコーヒーを見たいです。お気に入りのメーカーとかありますか?」
「これといって、特別ない」
 私は自宅で過ごす時もリラックスして過ごしてほしいから、 碧唯さんが美味しいと思うものを常備しておきたい。

 コーヒー豆を轢いてもらい、紅茶の茶葉も購入した。その後も碧唯さんの自宅に置きたいものを探すべく、ショッピングモールを探索いるうちに夕方になりつつあることに気付く。

「あ、あの……区役所にはいつ行きますか?」
 私が恐る恐る聞くと、碧維さんは困った顔をして小さくため息を吐く。碧唯さんは毎日仕事が忙しい中、婚姻届を区役所に出しに行くために休みを取ってくれた……はずなのだ。

「入籍のことだが、万が一離婚した場合に戸籍に傷がつく。だから、しないことにする」
「……そう、ですか」
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