御曹司からの愛を過剰摂取したらお別れするのが辛くなります!
結婚が決まった時には、入籍しないことなど知らされていなかった。しかし碧唯さんに拒否をされたため、私たちは本当の夫婦ではなく、内縁の関係のままだ。この事実はどちらの両親も知らない。
私は目尻に少しずつだが、涙が溜まっていく。こんな内容のことを歩きながら話すことではない。
「お前、話も満足にしたこともない俺なんかと入籍したいのか?」
「えっと、それは……」
私は少なからず、碧唯さんのことは気に入っている。無愛想で口が悪くても、縁があって一緒になれるならば尽くそうと思っていた。しかし……。
「お互いの両親たちが決めたことですので、お役目は果たしたいと思っています。でも……」
「でも、何だ?」
「碧唯さんの邪魔になるようなことはしたくありません。なので、籍を入れないままでも構いません」
有名国立大出の宮野内グループの御曹司の碧維さんに対して、私は誰でも入れると噂のお嬢様大学卒業の私。卒業後は父の口聞きもあり、宮野内グループの関連企業に就職したが、気付かずうちにお荷物になっていたらしい私。
私は企業の受付で働いていたが英語もろくに話せないし、先輩や同僚みたいに受付の仕事をこなしながら隙間時間にする数々の事務作業も上手く進めらなかったり……。とにかく仕事がみんなよりも効率的に捌けていなかったが、父の口聞きだったこともあり、一目置かれていたので怒られたりはしなかった。自分でも薄々は気付いていたが、腫れ物を触るみたいに扱われていたことを知った時はものすごく悲しかった。
結婚で仕事を辞めると伝えた際には喜ばれたが、実は『辞めてくれてありがとう』の意味が込められていたのだと何となく分かってしまった。特別に仲の良い人も特にいなかったので、結婚相手が誰かとは聞かれずにすんなり辞められたのは良かった。
相手が宮野内グループの御曹司、碧唯さんだと知らずに済んだのは不幸中の幸いだと思う。働いている時に知られたりしたら、妬みからの罵声も飛んできたと思うから。父が銀行頭取なのに私は出来損ないなので、陰口で何かを言われるのは慣れているけれど、面と向かって言われるのは辛い。
私が碧維さんに釣り合うわけもない。彼が誹謗中傷を受けるのも時間の問題かもしれない。……なので、碧唯さんが言うように入籍なんてしない方が良い。
「……そうか。賢明な判断だな」
碧唯さんは私の頭をぐりぐりと撫で回し、子供のように扱う。初めて触れられて碧唯さんの手の温もりに心が高鳴るが、涙が一粒ポロリと頬を伝う。
きっと碧唯さんが綺麗な顔立ちをしているので、私自身がもの珍しく思っているだけで、ときめきなんかじゃないと自分に言い聞かせる。
こんなに苦しい気持ちになるなら、婚約を結ばなければ良かったとさえ思う。碧唯さんは両家のために婚約を結んだのだと思うが、それにしても私はなんて惨めなんだろうか。愛されないにしても、お飾りの妻にもなれないなんて――
私は目尻に少しずつだが、涙が溜まっていく。こんな内容のことを歩きながら話すことではない。
「お前、話も満足にしたこともない俺なんかと入籍したいのか?」
「えっと、それは……」
私は少なからず、碧唯さんのことは気に入っている。無愛想で口が悪くても、縁があって一緒になれるならば尽くそうと思っていた。しかし……。
「お互いの両親たちが決めたことですので、お役目は果たしたいと思っています。でも……」
「でも、何だ?」
「碧唯さんの邪魔になるようなことはしたくありません。なので、籍を入れないままでも構いません」
有名国立大出の宮野内グループの御曹司の碧維さんに対して、私は誰でも入れると噂のお嬢様大学卒業の私。卒業後は父の口聞きもあり、宮野内グループの関連企業に就職したが、気付かずうちにお荷物になっていたらしい私。
私は企業の受付で働いていたが英語もろくに話せないし、先輩や同僚みたいに受付の仕事をこなしながら隙間時間にする数々の事務作業も上手く進めらなかったり……。とにかく仕事がみんなよりも効率的に捌けていなかったが、父の口聞きだったこともあり、一目置かれていたので怒られたりはしなかった。自分でも薄々は気付いていたが、腫れ物を触るみたいに扱われていたことを知った時はものすごく悲しかった。
結婚で仕事を辞めると伝えた際には喜ばれたが、実は『辞めてくれてありがとう』の意味が込められていたのだと何となく分かってしまった。特別に仲の良い人も特にいなかったので、結婚相手が誰かとは聞かれずにすんなり辞められたのは良かった。
相手が宮野内グループの御曹司、碧唯さんだと知らずに済んだのは不幸中の幸いだと思う。働いている時に知られたりしたら、妬みからの罵声も飛んできたと思うから。父が銀行頭取なのに私は出来損ないなので、陰口で何かを言われるのは慣れているけれど、面と向かって言われるのは辛い。
私が碧維さんに釣り合うわけもない。彼が誹謗中傷を受けるのも時間の問題かもしれない。……なので、碧唯さんが言うように入籍なんてしない方が良い。
「……そうか。賢明な判断だな」
碧唯さんは私の頭をぐりぐりと撫で回し、子供のように扱う。初めて触れられて碧唯さんの手の温もりに心が高鳴るが、涙が一粒ポロリと頬を伝う。
きっと碧唯さんが綺麗な顔立ちをしているので、私自身がもの珍しく思っているだけで、ときめきなんかじゃないと自分に言い聞かせる。
こんなに苦しい気持ちになるなら、婚約を結ばなければ良かったとさえ思う。碧唯さんは両家のために婚約を結んだのだと思うが、それにしても私はなんて惨めなんだろうか。愛されないにしても、お飾りの妻にもなれないなんて――