御曹司からの愛を過剰摂取したらお別れするのが辛くなります!
「強いて言うならば、揚げたての揚げ物が食べたい」
「揚げ物ですか、分かりました」
 私は鶏のささみと大葉を買い物カゴに入れる。揚げ物というだけでカロリーが気になるので、梅干しを叩き、大葉と鶏のささみを巻いて、パン粉をつけて揚げようと思った。本当は梅干しではなく、チーズを入れても美味しいけれど、それはまた今度にしよう。

「凜々子自身は何が食べたいんだ?」
「私は……ハンバーグを食べたので、それで充分です」
 何だか可愛げのない言い方になってしまった。

 碧唯さんともっと話がしたいけれど、入籍はしないと言われた手前、親しく接するのはやめた方が良いかもしれないと思った。
 気分が上がらない。本当の夫婦ならば、もっと楽しく夕食の買い物ができたのだろうか?

「味噌汁ではなく、スープにしないか?」
「どちらでも構いませんよ」
「せっかく車で来たのだから、日持ちのするものは買っておいた方がいい。俺は自炊をほぼしないから、必要なものが分からないから見繕ってくれ」
「……はい」
 スープには野菜をたっぷり入れよう。自炊をほぼしないと言っているので、野菜も不足しているはずだから。

 碧唯さんに煙たがられているかもしれないので、彼の身体のことを気を遣うなんてしなくて良いのかもしれない。しかし、大事なご両親から碧唯さんを預かっていると思えば、体調不良にさせるわけはいかないもの。好き嫌い関係なく、私の今後の生活のためと預かっているという理由で栄養バランスも考えよう。
 決して、妻としてではない。

 帰宅後すぐにお風呂を沸かして、碧唯さんが入浴している間に食事の支度をした。
 ショッピングモールからの帰り道、助手席に座った私は寝たフリをして碧唯さんから顔を背けた。

「サッパリして上手い」
 碧唯さんは一口食べた後に呟いた。
「良かったです」
 私は愛想笑いをする。

「……でも、何故、今日買ってきたスープカップを使わなかったんだ?」
「新しいカップだったので値札シールを剥がして、煮沸消毒をしてから使いたかったんです。せっかく購入していただいたのにすみません」
「……そうか、それなら仕方ない」
 心做しか、碧唯さんが少しだけ落ち込んだように見えた。
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