御曹司からの愛を過剰摂取したらお別れするのが辛くなります!
 使いはじめなので煮沸消毒をしたかったのは本当だが、味噌汁ではなく、スープにしようと言ってくれたのもきっと私を気遣ってくれたのかもしれないと気付いていた。

 碧唯さんがいずれは私と離れたいと考えているならば、そんな優しさは必要ない。突き放してくれれば、どんなに楽か……。中途半端な優しさは余計に傷つくだけだ。

 特に会話も弾まないまま、夕食の時間は終わりを迎えようとしていた。ランチタイムは特に会話がなくとも私はまだ幸せに浸っていたが、今は悲しみしかない。

「食器は俺が片付けておくから、風呂に入ってこい」
「いえ、そんなこと大丈夫です! 私がやりますから、碧唯さんはゆっくり休んでてください!」
 私より先に食器を持って立ち上がろとした碧唯さんを必死で引き留める。

「今の時代、男女平等なのだから気にするな」
 碧唯さんは静止せず、自分が使用した食器をキッチンへと運ぶ。

「そ、そういうことじゃないんです! 表向きは妻なんですから、妻らしいことをさせていただきます!」
 私も彼を追いかけるように食器を持ってキッチンに向かう。流し台に立っている碧唯さんを押しのけるように食器を置いた。

「妻らしいことこととは?」
「例えば食事の支度やその他の家事をしたり、碧唯さんが仕事で居ない間にできないことをサポートしたいんですよ!」
 碧唯さんに訊ねられて戸惑ったが、私の意見は間違ってはいないだろう。

「お前はそんなことをするために俺のために仕事も辞めたのか?」
 碧唯さんは食器洗浄機に食器を並べながら、嫌味を吐く。

「ち、違います! 仕事を辞めたのは別に碧唯さんのためってわけじゃないです。ただ……」
「ただ、……何だ?」
「何でもありません!」
 結婚のこともあったけれど、私はお荷物だったから辞めましたなんて口が裂けても言えない。いや、碧唯さんに煙たがられているならば、知られても構わないか……。

「私は……職場で嫌われてたみたいなんです。親のコネだとか言われて。まぁ、仕事もできないし、その通りなんですけどね」
 へへっ、と誤魔化すように私は笑う。
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