久遠の花~blood rose~【完】

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 小さい頃、不思議な夢を見た。
 夢の中の私は大人で、最初はとても楽しい日々。次の日も私は大人で、昨日の続きを見ている。
 ――でも。
 そんな楽しい夢は、三日で終わってしまう。
 四日目からは、とても悲しい夢。みんなが私を責め立て、追い出そうとする。よく見れば、私を責め立てているのは女性ばかり。そして口々に、「お前がいるから呪われる」「旦那が死んだのはお前のせいよ!」と、罵声を浴びせられる夢が三日続き、七日目には、真っ白な世界にいる夢で終わり。
 この頃は意味なんてわからなくて、ただ、みんなの顔が怖かった。昨日まで優しかった人が、すごい形相で私を睨みつけているのだから。



【夢は、経験したことしか反映しない】 



 悪夢をよく見ると言う私に、ある先生が教えてくれた。

『自分の願望も反映されるけど、基本的には、自分が体験したり、聞いたりしことを夢で見るんだよ。きっと、その悪夢は病気からくるストレスだろうね。楽しいことを考えれば大丈夫。悪夢はすぐに終わるよ』

 そう言って、先生は慰めてくれた。



 ――――だけど。



 先生の言葉は、嘘だと思った。
 だって、自分が経験したことしか夢にならないなら、今見ている夢はおかしい。



『これで……いい、の』



 虫の息で、私が言う。

『だいっ、じょ……。また……あえ、るっ』

 徐々に、体から熱が消えていく。
 誰かが必死に呼びかけ、手を握りしめてくれるのに……夢の中の私は、もうそれができない。



 七日目の夢。
 その夢はいつからか、私が【死ぬ夢】となって繰り返された。



 成長するにつれ、悪夢の回数は減ったものの、七日目の【死】は相変わらず。
 そんな私に、おばあちゃんはおまじないをしてくれた。

〝前は否。前は否――〟

 頭を撫でながら、おばあちゃんは続ける。

〝夢は夢。事世に前は否なり。――ほら、美咲も言ってごらん〟

 おばあちゃんにならい、私も同じ言葉を口にする。
 そう言った後、いつも飴をくれた。透明で、花びらのような物が入った、宝石のような飴。それを食べると、気分がとてもよくなったのを覚えている。



〝願う時は、気を付けなさい〟



 嫌なことがあると、おばあちゃんからよく、そんなことを言われた。

〝美咲には、叶えられない願いはないの。でもね、それは大事なモノを失うから出来ることなのよ〟

 意味がわからず首を傾げれば、大きくなればわかるからと、お馴染みの言葉を言われた。
 ――大人かぁ。その時になったら、おばあちゃんが言ったこと、ちゃんと理解できるのかなぁ?
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