久遠の花~blood rose~【完】
「それは――大事な、仲間だから」
「仲間――?」
「あぁ。尊敬出来る――大事な、仲間だから。オレは、お前を気にかけるんだ」
そう言い、強く抱きしめられた。
でも――どうして。
叶夜から流れる思いは、こんなにも、痛い思い感覚なんだろう。
「叶夜――ケガを、してるんですか?」
一瞬、抱きしめる腕に力が入る。
何も答えないと思っていれば、
「ケガは――してない」
と、小さく言われた。
「でも――痛い感覚が、流れてきたから」
「……心が、痛いだけだ」
「やっぱり、ケガをしてるんじゃ」
「これはケガとは違う。――目に見えるものじゃないから、どれだけ傷付いたか、痛いかなんていうのは、周りからではわからない」
目には――見えない傷?
「それは、命華である自分にも、治せないんですか?」
「っ――いつかは。治せるかも、しれないな」
ははっ、と苦笑いが聞こえる。
するとまた、叶夜から痛みを感じた。
自分と話していると……痛みが、増している?
痛みの原因が自分にあるんじゃないかと、そんな考えが浮かんだ。
「もし、自分といることが原因なら――」
そっと、叶夜の胸に触れる。
鼓動は正常。でもやっぱり、痛みは相変わらず感じられた。
「離れた方が――いいでしょう?」
そうすれば、この痛みを治せるんじゃないかと思った。
叶夜から離れようと、一人で立とうとした途端――さっきよりも強く、体が引き寄せられた。
「そんな必要――ない」
さっきよりも、痛みを感じてる。
自分といると痛みがあるのに、離れると余計に痛みがあるなんて。
「不思議ですね。自分が離れる方が、痛みが増すだなんて」
「離れる方が、何倍も痛いからな。痛くても問題無い。だから――どうか、離れないで」
「離れなければ、叶夜は嬉しいんですか?」
「あぁ、嬉しい」
「痛みよりも、嬉しさが増しますか?」
「あぁ、離れなければな」
痛いけど嬉しくて。
離れたら、もっと痛い――?
「――――わからない」
痛みや喜びの感覚は理解している。
でも、叶夜が感じていることは矛盾していて、よくわからない。
「無理してわかろうとするな。――夜風は、体に悪い。屋敷に戻ろう」
やわらかな笑みを見せ、立ち上がる。
無理してわかる必要はないらしいが――いつかは、それを理解出来るだろうか。とりあえず今は。
「離れると痛いなら――そばにいます」
叶夜が苦しくならないよう、最善を尽くそう。