久遠の花~blood rose~【完】
……ぞくっ。
体に、冷たいなにかが走る。
それは内側から感じられ、初めて体験する感覚に、自分は胸をかきむしった。
「あっ……ぅ、ぐ!?」
左手は石に引っ付いたまま。焼けるような感覚が左手を襲い、その場でもがいていた。
『――――誰?』
声が聞こえた。
どこからするのかと見回した途端――声の主は、目の前に現れた。
白銀に、紅を足したような髪色。腰よりも長く伸びた髪に、自分と同じ服装で――。
その姿を見て、まずは自分と言う存在が現れたことに安堵した。
『――――』
「――――」
無表情のまま、赤の命華と自分は視線を絡めた。どれくらいそうしていたのか。黙っていると、赤の命華は再び、自分に話しかけた。
『アナタは……誰?』
「自分は――日向、美咲。あなたと同じ」
『同じ?――違う。ワタシはフェリス』
顔を近づけ、赤の命華……もといフェリスは、話を続ける。
『アナタは、力の無い命華。ワタシは、力がある命華』
「だったらお願い。その力を自分にも!」
『どうして、助けようとするの? 命華がこうなってしまったのは、あの人たちの責任なのに』
「あの人たちって……あなたは、なにを知っているの?」
『ワタシは力そのもの。だから、色々と知ってる。――命華がこうなったのは、王華や雑華の一族が悪い』
「そんなことはわかってる……。でも、日向美咲は、種族なんて関係ない。今共にいる人を救いたいと選んだ!」
反論する自分に、フェリスは表情一つ変えない。
『命華には自由が無い。どうして……いつもワタシたちが犠牲になるの? ワタシは嫌。滅びるなら――向こうが滅びればいい』
「あがぅ!?」
体に痛みが走る。それは、フェリスの言葉と連動しているのか。表情には出さないが、感情を出す言葉の時に、体は痛みを感じた。
『アナタも、心の底では恨んでいるはず。ワタシたち命華に、こんな呪いをかけた者たちを』
「そんっ、なこと――…」
エメさんから、話には聞いている。
でも、今の自分には、恨むとかそういった感情はない。ないはずだと確信しているのに――この瞳を見ていると、自分の思考がおかしくなりそうだ。
『呪いをかけたのは、アナタが助けたいと思ってる中の一人、雅の一族。叶夜も、命華の村を滅ぼした。――だから、カレらが傷付くことは償い』
雅の一族が……原因?
それに、村を滅ぼしたって……。
『雅の一族は、最初の赤の命華を殺した。その時の力が溢れて、他の命華にも呪いがかかった。ワタシたちは昔から、あの人たちにとって、利用するだけの存在でしかない』
知らないことを、フェリスは次々と話していく。本当にこれが自分の中にある部分なのかと疑いたくなる。
「きず、つくのが……償いなんて。……そんなのっ、ぁぐっ!?」
叫んだ途端、ズキッ! と心臓を鷲掴みにされたような痛みが走る。
呼吸がしにくく、まともにフェリスの顔を見れずに俯いていた。