久遠の花~blood rose~【完】
「……失礼ですが、捕獲する道具は?」
「心配しなくても在る。でも、これは私専用なんだ」
だから私がやる、と穴から距離を取るよう指示をされた。
周りを見れば、そこには祭壇が置かれていた。教会に似ている気がするが、十字架や神の像も無く、違った雰囲気を感じる。
ゴゴゴゴゴゴゴッ……。
小刻みに伝わる振動。次第にそれは大きくなり、立てない程の刺激に変わっていく。
「これもっ、使い魔が?」
「らしいな。全力出せってのは、あながち大げさでもなかったか。――来るぞ」
おもむろに、女性は着ていた上着を脱ぎ始めた。タンクトップ姿になると、女は目を閉じ、何か呟やき始める。
じわり、女の肌に青白い線が見える。それは徐々に文字となり、様々な刻印を全身に浮かび上がらせた。
ゆらゆらと、背後に陽炎のようなものが見える。形はわからないが……とても綺麗なものがあるというのはわかる。
「貴方は首輪を壊して」
女性の両手に、鎖が出現する。くるくると動く様は、まるで意思を持っているようだ。
バ―――ン!!
穴から、何かが勢いよく飛び出した。
黒いような、青いようなモノ。数メートルあろうかというそれは、定まった形を持っていない。
あんな見た目じゃ、何処に首輪があるのか……。
「エフ、早く離れろ! 一緒に捕獲するぞ!?」
目を凝らせば、何となくだが、頭のような部分が見えてきた。どうやら、体の周りに炎をまとわせているようだ。
一気に地面を蹴り、背中部分に乗る。頭に向かって走れば、引死になって首輪を壊そうとしている倉本さんが見えた。
「俺が壊す。お前は離れろ!」
「おっ、お願い!」
律儀に挨拶をしてから、倉本さんは離れた。
鎌だと首まで斬りかねない……。
切り離すことはやめ、両手で首輪を握る。術が少し感じられたが、ほとんどは倉本さんが解除していたんだろう。首輪には、既に幾つもの亀裂が入っている。
こんなところでもたついている暇はない……早く。早く美咲の元へ!
「おとな、しく……」
「ガゥッ! グゥゥ、ガ、ガッ!?」
「しっ、ろぉぉーーー!!」
壊すと、使い魔は酷く暴れ出した。
「早く離れろ!」
女性の叫び声で、急いで使い魔から離れる。すると女性は、使い魔を鎖で空中に縛り上げた。
「ひーちゃんやるぅ~!」
「っ!? ち、力が抜けることを言うなっ。早くしろ!」
急かされた倉本さんは、明るく返事を返しながら、ゆったりとした歩調で使い魔に向かって行く。
「――――無様だな?」
使い魔の真下で立ち止まると、倉本さんはフードを脱いだ。