久遠の花~blood rose~【完】
開 花 式(後)
昔々のお話。
真っ暗な場所に、一つの存在がありました。
次第にソレは、様々なモノを創っていきました。
まずは光。
次に炎、水、空気。
星の中には大地を創った。
――しかし、それだけではただの飾り。
動くモノが欲しいと、それまで創ったモノから、動く存在を創り出します。
後に、神や悪魔。天使と言われる存在を。
ソレは、とある場所で過ごすようになった。
そこには様々なモノがいて、皆、ソレとは違いカタチを持っていました。それらと触れあってみたいと思ったソレは、自身をそれと似たカタチに成します。カタチあるそれは、他のモノが創った人間と呼ばれる存在で、他のモノからも好かれるようになっていました。
最初は、どちらもうまくいっていました。でも……人間は、ソレの存在が恐ろしかったのです。見た目は同じでも、力は人間とは違う。少しの力で大地を割り、自分たちを簡単に殺してしまうその力が。
人間の思いや信仰心は、ソレや、神や魔には糧でした。けれど、それが更なる悲しい結果を生みます。
【この世で最も醜い存在】
ついに、ソレは人間からそう語られるようになしました。他の神には、善と悪の両面があるというのに、ソレには、絶対的な悪という烙印を。
〝――――それを望むなら〟
人間の信仰を受け、ソレは望む姿を取ります。
破壊。呪い。疫病。強姦。殺人……。
あらゆる悪行に、ソレの名が使われました。
そして人間は、時に、同じ仲間にそれを行いしました。
たった一人に全てをなすりつけ、その人間を、ソレの化身だと謳い殺したのです。
それを見て、ソレは絶望しました。
もう関わることはしないと決め、薄暗い森の奥へと姿を消したのです。
*****
ただ、話してみたかった。
ただ、笑ってほしかった。
ただ――…。
自由に、なってほしかった。
全知全能だとお前たちは言う。
しかし、干渉出来る事には限りがある。
全ての願いは叶えられない。
全てのモノを救えない。
叶えるには、相応の対価と運がいる。
崇めるモノ――全てはその一存。一生願い続けようやく叶うものもあれば、願った瞬間叶うものもある。
思いどおりにいかないからと、信じるモノを貶(おとし)めようなど。
何故……大事なモノを奪う。
何故……眠らせてくれない。
これ以上――何を望む。