久遠の花~blood rose~【完】
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「――――これで、あらかた一掃出来ましたか」
紫の瞳を輝かせ、リヒトため息をつく。
「さて、これからどうしたものか」
既に、森の奥へ進む道は閉ざされている。仮にこじ開けたとしても、入れるのはおそらく――。
「――――リヒト!」
心配そうな表情で駆け寄ったのはシエロ。慌てて顔を伏せるものの、まだ色を戻すことが出来ない。彼女を傷付けまいと、リヒトはそのままの状態でいることにした。
「本当に……アナタはまた無茶をして」
「それはこっちのセリフです! そんなに力を酷使して……あの子を一人にするつもり!?」
「そんなつもりはありません。それに、アナタがいないと彼女も――私も悲しみます」
ようやく色が戻り、シエロの顔を見る。
「私が傷付けば、アナタは嫌がるでしょう? それと同じ――私も、アナタには無事でいてほしいんです」
「でも……この先にあるのは」
「何が見えたかは知りません。しかし、未来は絶対ではない。不幸な結末も、幸せな結末も。どんな未来を迎えるかは、その時の者が望んだ方向に向かうはずです。その未来が嫌なら、考えなければいい。そんな未来よりも、私を信じてほしい……」
「――前向きになったものだな」
昔とは大違いだ、と蓮華が二人の前に現れた。
「? レン――あなた」
「構うことはない」
口調はいつもと同じ。だが、気配はまるで違う。人形染みた雰囲気に、シエロは出会った当初を思い出していた。
「シエロはリヒトといろ。今回ばかりは言うことを聞いておけ」
「レ、レン。私の味方なんじゃあ……」
「不満は受け付けぬ。ほら、手を貸せ」
懐から数珠を取り出し、シエロの腕に付ける。以前渡した物とは作りが違い、それには長い年月をかけ力が込められていた。
「外すなよ。あと、それは私が持って行く」
シエロが懐に持っていた短剣を奪う。これは自分が運ぶと、シエロがこれ以上動くことを断った。
「……何も、レンがすることないのに」
「まだ私が行く方がいい」
「うぅ……そうはっきり言わないでよ」
「釘を刺さねば、また一人で消えるではないか。――リヒト、しっかり見張れよ」
「もちろん。あとは全て、私が請け負います」
「そうしてくれ」
ではな、と片手を軽く振りながら、蓮華は森の奥へ消えて行った。
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「っ……ぐ、ぅぁ」
「もうすぐリヒトさんのとこ着くからっ」
突然倒れたエメ。傷を負ったわけでもないのに、彼女の体は衰弱していた。もはや、自分で歩くことも出来ないほどに。
「エ、ル……と、まって」
何度も繰り返すエメに、雅はようやく足を止めた。木の根元に座らせると、エメは酷く顔を歪めながら言う。
「そろ、そろ……保てない。消える前にお願いっ。――力を、貰って」
「だって! そんなの確実にっ」
「わかってる……でも、これは元々エルのモノよ?」
「…………」
「それ、に。――消えたくないもの」
寿命をまっとうした者は姿形が残る。だが、殺されたり呪いの進行が早まった者は、跡形も無く消えてしまう。
このまま行けば、エメは確実に後者となる。仮にならなかったとしても、雅が力を貰うことでその危険が上がるかもしれない。