久遠の花~blood rose~【完】
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正直、オレと■■■は困っていた。二人であいつを連れていくはずだったが、ここまで美咲が来るとは――。
「体は間に合うが、魂を完全に戻すのは難しい」
やはり、多少の欠落があるのか。
特に記憶の方は、混乱を避けられないらしい。
「お前は――どうする?」
俺は既に体が消えている。だから今更戻ることは出来ない。――出来たとしても、どれほど時間がかかるやら。
「だが、諦めてはいないのだろう?」
当然だ。もし生まれ変わっていても、必ず見つけて見せる。
「そうか。我は――この世界に留まっていることにしよう」
■■■は、もうこちらの世界に干渉はしないらしい。事が事なだけに、均衡が戻るまでは完全に接触を断つことになるようだ。
「お前の世界は、なんとか浄化されたようだな」
ミヤビたちが何をやっていたのかは知っている。長が土地の浄化をしたこと。そして、エメさんは影を封じたこと。おかげで、オレたちはあいつと美咲に集中することが出来た。
「残る問題は一つ」
ため息をつく■■■。美咲を戻すのはいいが、そこまで連れて行き、安全に引き渡すことが問題だった。美咲だけを戻せないことはないが、王華や雑華の残党から狙われる可能性が無いとはいえない。おまけに、今の美咲には抵抗力がほぼ無い状態。体を奪われるという心配もある。出来ることなら、直接誰かに手渡す方が……。
「華鬼の里は――人の裏だったな?」
頷けば、そこへ繋げようと■■■は言う。
だが、あそこも今は危険な状態じゃあ……。
探れば、そこに影はいないものの、多くの草木が枯れ、建物も壊れていた。
「ここならば、敵の存在は無い。花の場所であれば、他の者は近付かぬだろう?」
見覚えのある場所。そこは、夜に美咲が倒れていた場所。他の植物は枯れているのに、そこだけ隔離されたような美しさを保っていた。
確かにここなら安全だ。ここに来るとしたら、蓮華さんぐらいだろうからな。
「―――そろそろ、か」
お互い、離れる時間が迫る。
元々俺たちはカタチが無い。だから死ぬという感覚ではないが、こうして話しが出来なくなるというのは、少し淋しいものがある。
「我が先であれば、手元に置くからな」
一番誰かに執着してはいけないモノがよく言う。
悪いが、誰だろうと渡すつもりはない。
俺の方が先に――彼女と出会ってみせる。