愛の重い彼との秘密の時間

「目は黒目がキラキラしてかわいい。鼻も小さくて、形がキレイで好き」


私のまぶたと鼻に優しく触れながら解説していく。毛穴が見える! 本当にやめて。そう思うのに。


後ろから強く抱きしめられて動けない。私の背中は完全に琉斗くんに寄りかかっている状態。触れてくる指先は優しいのに、腕は絶対に離さないというような力強さ。


蛇にぎゅうぎゅうと巻かれた獲物みたい。
細いくせにどうしてこんなに力が強いの?


目の前のキレイな顔の琉斗くんを見上げたまま、唇を噛み締めて何もできない。思わず息を止めてしまう。


「歯は……」


そう言って、私の唇をこじ開けるように指を入れてくる。嫌でも口を開ける形になってしまう。


「んん!?」

「ほら、この八重歯がかわいい。笑った時に見えるこの歯が大好き」


あわわ……。他人に自分の口の中を触ってもらったことがあるのは歯医者さんだけ。治療だから緊張はあっても恥ずかしさはない。

でも、これは治療でもなんでもない行為で。


この非日常的な空間に、一気に心拍数があがる。自分が興奮しているのが分かる。

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