憎き上司の子を懐妊したのち、引くほど溺愛されている件について。

…言えない



結局、いつも通りの日常が始まった。

経理部のオフィスで結城さんに沢山の仕事を押し付けられ、それによる残業。

その間、何度か退職届や異動届を提出した。
しかし全て破棄されている。




「…沢城。身体、大丈夫か?」
「……」


ただ1つ…。変わったことがある。
結城さんは勤務時間中でも私と2人きりになると、そんな風に労わるような言葉を掛けてくるようになった。


私…というか、私の身体の心配か。
私の心については無関心のままだが。


「大丈夫です。お気になさらず」
「沢城…」
「良いですから。異動も退職もさせてくれないなら、必要以上に関わって来ないで下さい」
「沢城………」
「私、嫌いなんです。結城さんのこと」
「……」
「では、帰りますね。今日もお疲れ様でした。憎くて大嫌いな…結城さん」
「……」


突っ立ったまま黙り込んだ結城さんを無視して、オフィスを後にした。



……実は最近、確信したことがある。
結城さんはやっぱり、私が否定的な言葉を言うと身体が反応しているようだ。


今だって、私は見逃さなかった。
結城さんの態度の変化に。



……多分、そういう性癖の持ち主。



そう考えると…結城さんのことが益々怖くなってきた…。




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