憎き上司の子を懐妊したのち、引くほど溺愛されている件について。
「おめでとうございます…で良いのかな、沢城さん。パートナーがいないようですけれど」
「……私もよく分かりません」
「お相手の心当たりは?」
「それは、あります」
「…うーん、そうですか。因みに…産む意思はありますか?」
「……それも…あります」
「…分かりました。取り敢えずまた4週間後に来てくれるかな。で、もしも産む以外の選択をするのならば…早めにね。ただ、絶対に無いと信じておりますが」
「……はい」
初めての産婦人科にて、妊娠が…確定した。
…凄くない?
あのたった1回で確実に妊娠させるなんて。
エリートは性行為もエリートなのか。
なんて、訳の分からない言葉が思い浮かんだ。
「……はぁ」
お腹を撫でながら思う。
憎くて大嫌いな上司との子供。
だけど、子供に罪は無いから……。
…当然だけど、堕ろすつもりは無い。
でも、妊娠したという事実を…結城さんに話すつもりも無い。
「…………」
とはいえ、相手は直属の上司。
バレるのは時間の問題だ。
「……ならば、バレるまで…隠すのみ、か…」
そんな無謀な挑戦をする道を、私は選択した。