憎き上司の子を懐妊したのち、引くほど溺愛されている件について。

負担の積み重ね



「沢城!! また急な仕事だ!!」
「…………」
「おい、沢城!! 返事しろよ」
「…はい」


今日も相変わらずだ。
16時42分に振られる仕事。

今この瞬間、残業が確定した。




前にあった吐き気は悪阻だった。


どうやったら吐き気を極力減らせるか試行錯誤したところ、食べたいと思える物だけを食べるようにしたら、吐き気の頻度が減った。


私の場合、りんご味のこんにゃくゼリー。


それに気付いてからは、基本的にそれしか食べていない。


だけどそのお陰で、仕事中に吐き気を催してトイレに駆け込むということがほぼほぼ無かった。

結城さんや周りの人に気付かれなくて済む。
それが凄く…嬉しかった。




ただ、やっぱり体には堪える。

今までと変わらない遅くまでの残業……。

ご飯が食べられなくて、眠りも浅くて……。



「…おい、沢城。顔色悪いぞ」
「……」
「大丈夫か?」


小さく頷いて、またパソコンに向かう。


けれど、不味い。
身体はいよいよ限界かもしれない。


「…沢城……体調悪いんだろ。気付かなくて悪かった。今日は帰ってくれ」
「…………」
「沢城?」


久しぶりに聞いた結城さんの優しい言葉。

昔は物凄く気にかけてくれていたなぁと、そんな懐かしいことを思い出しながら……。




やっぱり限界だった身体。



私は、その場で意識を失った。




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