憎き上司の子を懐妊したのち、引くほど溺愛されている件について。


「……………………」


眠っていた…気がする。
目を開けると、見慣れない場所が視界に入ってきた。



「……」
「沢城、起きたか」
「……結城さん」


私が寝かされているベッドの横で、腕を組んで椅子に座っていた結城さん。

少しだけ眉間に皺を寄せて、難しそうな表情をしている。


「…ここは病院。お前は会社で意識を失って倒れた。それで救急車を呼んで、俺も一緒に同行して…今ここに居る」
「……」


倒れたか……。
意識を失うまで無理をしたつもりは無いけれど。

それよりも、結城さんに助けてもらったことに関して少し苦痛を覚えた。


「……すみませんでした」
「…謝罪はいらん。当然のこと。……ただ1つ、聞くけれど」



真っ直ぐな結城さんの目。
そんな彼は、小声で囁くように言葉を発した。



「…沢城…。妊娠してるって…どういうこと……」
「……」
「検査の過程で分かったんだ。…何で妊娠のことを隠していた? てか誰の子?」
「………」
「医者は栄養失調だって言っていた。それも、妊娠によるものだよな?」
「…………」


結城さんの質問攻め。

窓を眺めながら…なんて答えるか悩んだ。
しかし…良い言葉が思い浮かばない。


「沢城……」
「……誰の子って、馬鹿げたことを言いますね。自分がしたことなのに」
「…やっぱり、俺だよな………」
「結城さん以外誰がいるって言うのですか。彼氏もいない私に」
「……」


俯き、黙り込んだ結城さん。


…ほら。
あれだけ『孕ませたい』とか訳の分からないことを言っていたのに。

いざ実際に妊娠するとこの様子だ。

大方、どう対処しようか…賢いその頭をフル回転させているところでは無いかな?




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