憎き上司の子を懐妊したのち、引くほど溺愛されている件について。
残業は相変わらずだ。
就業まであと10分ってところで、懲りずにまた『今日中』の仕事を振る結城さん。
苛立つ。ムカつく……んだけど。
…明らかに変わったことがある。
結城さんは私に対する口調が優しくなり、負担を軽減させようとしてくれるようになった。
「無理だけはするな、沢城…」
「……」
急な態度の変化についていけなくて、頭が痛み始める。
というか、前も思ったけれど。
無理するなと言うのなら、残業させずに帰らせてくれたら良いのに…。
そう思い、思わず頬を膨らましながらパソコンに向かう。
薔薇の件もあったからか、帰り支度を済ませた経理部員は「結城部長と沢城さん…今度はどうした?」なんて言いながら、皆が頭にクエスチョンマークを浮かべていた。