憎き上司の子を懐妊したのち、引くほど溺愛されている件について。

独身の妊娠



「え、ちょっと…もしかして、沢城さん…」
「…はい」
「ごめん、違ったら申し訳ないんだけど……おめでた…?」
「………」


妊娠5か月を過ぎた頃。
未だに部内でも妊娠のことは秘密にしていた…が、安定期に入ってお腹の膨らみも目立って来たこともあり…。ついに、指摘された。


「…あ…まぁ…そうですね。はい」
「え、結婚をしていないのに妊娠ってどういうこと!?」


声が大きいこの方。
その言葉に反応した他の経理部員たちも私の方を向いて、驚いたような表情を浮かべる。


「ま…まぁ。今は多様性の時代ですから。結婚が全てではありませんし…」
「で、仕事はどうするの?」
「まだ…考え中ですけど、お休み頂いて戻って来たいと…今は思って…います…?」
「そうなの!? え、私がおばさんだからかもしれないけれど、理解出来ないわ!! 休みを取るのも、結婚していないのも!」
「………」


他の部員たちも言葉を発して、ざわざわとなり始めた経理部室。

こういう時に限って、結城さんはこの場に居ない。
…いや、居なくてむしろ良かったかな。

暫く黙り込んで下を向いていたが、部屋の空気に耐えられなくなった私は、マグカップを持って炊事場に向かった。


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