憎き上司の子を懐妊したのち、引くほど溺愛されている件について。

意味不明な言葉



次の日、またいつも通りの結城さん。

私には厳しく酷いこと言って、それ以外の女性社員には優しいことを言う。


昨日のことを思い出すと、やっぱり馬鹿にされているとしか思えなくて。
妙に…苛立つ。




結城さんは部長になる前は、経理部課長だった。
ベテランと若手を繋ぐ中間管理職という立場で、経理部を支えていた。


その頃は私に対しての態度も他の女性社員と同じだった。
結城さんの部下として付いていた私は、一緒に帰ったり遅くなった日はご飯を食べに行ったりしたこともある。


辛い時には支えてくれた。


泣き言を言った日には喝を入れてくれた。


失敗をした時は一緒に謝ってくれた。


嬉しい時は一緒に喜んでくれた。



だから、結城さんが部長になった時。
慣れない立場で戸惑っていた彼を、今度は私が支えるのだと…頑張っていた。


最初こそ、結城さんとの関係はこれまで通りだった。
何も変わらず、支え支えられの関係となっていたのに、日に日に様子がおかしくなった。

私に対する態度が異常なまでに急変し、それを見ていた他の部員も「結城部長と沢城さん、何かあった?」なんて言い出す始末。


冷たくあしらわれ、多大な業務を私に振り…。


何より、私に対して一切笑わなくなった。



私には本当に、心当たりが無くて。


何故そうされるのか。


何が原因なのか。


何一つ分からなくて…。



結城さんが部長になって2年経つ頃には、すっかり私は結城さんのことが憎くて大嫌いになっていた。


一緒にご飯を食べに行っていたなんて。
そんな過去が考えられないくらい、憎い、嫌い、嫌い大嫌い…。



「沢城!!」
「……え?」
「急な仕事が舞い込んできた。これ今日中に済ませろ」
「………」
「他の女性社員は良いからな。早く帰って体を休めな」
「………………」



現在時刻、16時53分。
あと7分で終業。


ほら、出た。
今日も残業確定。


そして他の女性社員は帰らせる。



「………」



悔しい。

悔しい、悔しい…。


100歩譲って、残業をするのは別に良いの。
ただ、他の女性社員との対応の差があからさま過ぎて、意味が分からなくて…。

悔しすぎて、誰にも見られないように…ひっそりと涙を零した。



< 5 / 31 >

この作品をシェア

pagetop