憎き上司の子を懐妊したのち、引くほど溺愛されている件について。


いつまで経っても終わらないキス。
憎くて嫌いな人なのに、今されているキスが気持ち良くてどうしようもない。


心と身体がそれぞれ別の人格を持っているような錯覚がする。


憎くて、嫌いで、不快なのに。
身体は疼き、頬は熱を持ち、下着の中が濡れる感覚がした。


…馬鹿でしょ、こんなの。


快楽を覚え始めた身体は、私の意思とは無関係な反応を見せる。
抵抗を続け、結城さんに悟られないようにするので必死だった。


「沢城…。お願い、抱かせて。抵抗せずに諦めてくれ」
「馬鹿言わないで下さい。本当に意味が分かりません」
「孕ませたい」
「だから馬鹿なこと言わないでっ!!」


力を振り絞って結城さんの身体を力強く押す。
一瞬だけ隙ができたタイミングで逃げ出そうとするも、またすぐに捕まる。

そして勢いよくオフィスの床の上に押し倒され、寝転がってしまった。

タイルカーペットが敷いてあるとはいえ、硬いオフィスの床。
頭も背中も痛んで、思わず身体が暴れ出す。


「本当に、本当にふざけないで!!」


ついでに起き上がって逃げ出したい。

そう思い、暴れるついでに結城さんの身体を押し続けた。


しかし、やっぱりびくともしない結城さん。


「ふざけてないよ。俺は本気で言っている」
「………」


だとしたら尚更分からない。
嫌いな人に本気、なんて。

やっぱり結城さんは頭がおかしいと思う。
エリートと呼ばれるくらい有能な人の思考なんて、私には一切分からない。


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