憎き上司の子を懐妊したのち、引くほど溺愛されている件について。

憎くて大嫌い



ホテルに着くなり、速攻ベッドに押し倒された。

今度はふかふかな布団。
オフィスの硬い床とは大違いだ。


「沢城……」
「……」


募る嫌悪感。
それとは反対に、疼く身体。

投げやりで抱いても良いと言ったけれど。

やっぱり…憎くて嫌いな結城さん。
抱かれることに抵抗はある。


「沢城…」
「……」


歯がぶつからないように加減をしながらキスをする。
唇を甘噛みして、今度は優しく舐め回された。

それがやっぱり嫌で……。不快感が少し湧き上がる。



だから今回は、気持ち良さが来る前に抵抗をした。



「結城さ…っ、抱くのは良いですけど。もう、キスはしないで下さい…」
「何で?」
「…貴方のことが嫌いだからです。嫌いな人にされるキス…不快です」
「…………」


唇を離し、何も言わないまま胸に手を伸ばされる。
そして服の上から激しく揉みながら、顔を埋めた。


「沢城……沢城…」
「………も、もう止めて…。名前も呼ばないで下さい…。嫌です、嫌だ…」
「お前…同意したよな」
「したけど、嫌なものは嫌です…」
「……」


結城さんは無言のまま更に下へ手を伸ばす。
下着の上から何度も撫でられ…次第に侵入する手。


「………」


何もせずとも、濡れている。
その事実が恥ずかしくて、私は何も言わずに両手で顔を覆った。


「…沢城、顔見せろ」
「……嫌です」
「見せろ」


無理やり右腕を掴んで引っ張られ、紅くなった顔が露わになる。
悔しくて目に涙が溜まるのを感じながら、唇を噛んで睨んだ。


「沢城、俺のこと憎くて嫌いなんだよな?」
「…そうだと言っているでしょう。大嫌い、大嫌い!! 憎き結城さん、大嫌い…!!」
「…………」


眉間に皺を寄せて、口角を上げながら唇を噛んでいる、結城さんの何とも言えない表情。


「…良いね、もっと言ってよ。俺のことどう思っている?」
「嫌い…大嫌い」
「……沢城、最高」


訳の分からない台詞を零しながら私の下着を剥ぎ、何度も優しく触れてきた。



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