天使と悪魔の学園へ、ようこそ! ~男装地味子の絶対バレてはいけないヒミツ♥~
「よう、お前、低能天使じゃなかったのか? 柵、飛び越えられなかったよな?」

 席に座った瞬間、右隣の生徒会長、東条くんに声を掛けられた。
 私に悪魔の能力がないと思って怪しんでるみたい。

 ――まずい、もうバレるバレる!

「嫌だな、俺は頭脳派なんです」

 当然のごとく真顔で言い放つ私。

 ――よし! これで乗り切った!

「はっ、低能悪魔とか最悪だな。そんなんで俺たちを守れんのかよ」

 冷たい笑いが私を見る。

 ――私も好きで親衛隊になんかなったんじゃないですぅぅぅ!

 って声高々に言ってやりたい。

「なに? 晩、雪と知り合い?」

 今度は左隣から声を掛けられる。
 副会長、私のこともう下の名前で呼んでくる。

「今朝、この雑種が迷子になってたところを助けてやっただけだ」

 冷たい感じで答える東条くん。

 ――ざ、雑種……! たしかにあなた方みたいに高貴な生まれじゃないですけど、雑種って……。

「へぇ、じゃあ、見回り行った甲斐はあったんだ?」

 赤い瞳を細めて、副会長の京極くんが笑ってる。
 彼の話からすると、やっぱり、東条くんは見回りのために学園の外に居たんだ。
 あれは優しさだったのか……。

「その節は、ありがとうございました……」

 そうだ、お礼を言い忘れてたんだった、と思っていまさらながら頭を下げる私。

 もさっとした前髪の向こう側が一瞬静かになる。
 視界不良で何も見えない。

「それで、晩、寮の部屋割りどうする?」

 私の言葉に反応することなく、普通の会話がはじまった。
 ――無視! 印象最悪なんですけど!

「それはあとでもいいだろ。あいつらとも相談しないといけないしな」

 ぶっきらぼうにそう言って、東条くんは前を向いた。

「ほい、じゃあ、まあ明日から授業がはじまるわけなんだが、出世したいやつは成績が上がるように頑張れよ」

 待って、私、加賀美先生の説明何も聞いてなかった。
 意地悪くにやっと笑ってるところを見ると、それ分かってますよね? 先生。

「今日は以上だ、寮に行って自分の部屋を確認するように」

 先生が欠伸をしながら壇上を降りると、生徒たちがわらわらと席を立って教室から出ていく。

 もしかして、寮の説明しちゃった?
 私、どこ行けばいいの?

 とりあえず席から立ってみるけど、呆然として動けない。

 すると

「へ?」

 突然、両脇から腕をガシッと掴まれた。
 東条くんと京極くんだ。

「お前も行くんだよ、親衛隊」

 東条くんが怖い顔で私に言う。京極くんはにこにこしてるし。
 え? 地獄に落ちろってことですか?

 私の名前、親衛隊じゃないんですけどぉぉおおおお!
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