天使と悪魔の学園へ、ようこそ! ~男装地味子の絶対バレてはいけないヒミツ♥~
 この学園に入学した数人の人間たちは天使と悪魔にその正体をバレてはいけない。

 中等部の三年間、彼らに人間だとバレなければ高等部卒業までの学費が免除されるが、バレた場合は学費が払えない=即刻退学となる。

 人間側は正体をバレないようにするために何をしてもいい。

 天使と悪魔は人間を見つけて密告、成功すれば成績がアップする仕組みになっている。
 逆に間違って密告した場合は成績が大幅にダウンする。

 全校生徒に与えられた人間のヒントは一つ。
 それは『人間は女子生徒の中にいる』

 将来、大天使とか大魔王を目指している子たちは、この学園での成績が関係してるから必死に人間を探すらしい。
 人間が見つかることを『魂をうばわれる』と表現していて、ちょっと怖いんだ。

 そんな学園に入学した私は正真正銘の女で、すごい貧乏な家の子で、お父さんとお母さんに「お金がなくていい学校に通わせてあげられなくてごめんね」と泣かれ、私の下には小学六年生の弟、皐がいる。

 自分と家族の将来のため、この名門校を無事に高等部まで無償で卒業して、いいところに就職したい。

 そのために私は今日から私は『男子』として生きていくことを選んだ。

 黒い地毛を短くカットして、前髪はぼさっとさせて、ダサい黒縁メガネもかけて、制服も天使組の男子の制服を着ている。

 完璧。これこそ完璧だ。
 誰も私を女だとは思うまい。

 天使と悪魔に泳ぎは必要ないから水泳の授業もないし、教師たちは事情を知ってるし。
 きっと、私はこの中等部三年間をなんとか過ごすことが出来るだろう。

 地味に目立たずに過ごすのだ!


「しつれいしま~す」


 小声で囁きながら、ホールの後ろから中に入っていく。

 現在、ここでは入学式が行われている。
 みんな理事長先生の話に集中していて、私には気が付いていないようだ。

 というか、理事長先生、二十代に見えるの私だけ?

 金色の髪がとても綺麗で、中性的でもある。
 格好は貴族みたいだし、不思議な世界観だ。


「ここに入学を赦された人間の諸君は他の者に正体がバレないように頑張りたまえ」


 ちょうど、この学園の特色を説明しているところみたい。
 というか、他の者ってことは人間同士も知られちゃいけないってことだよね。

 人間も他の人間を密告すれば成績は上がるけど、仲良くすればバラされる危険があるってこと……?
< 4 / 84 >

この作品をシェア

pagetop