天使と悪魔の学園へ、ようこそ! ~男装地味子の絶対バレてはいけないヒミツ♥~
「ひとまず、早く上がれ。戻るぞ」

 晩くんがこちらに手を伸ばそうとしていて、まずいと思った。

 このままだと本当にバレちゃう。
 胸元を隠す? でも、それで、どうにかカバー出来る?
 どうしよう、心臓バクバクいってる。

「あの、俺、もうちょっと浸かっていきます」

 ポーカーフェイスでとりあえず、言った。

「は?」

 ホラーなライトに照らされる戸惑った晩くんの顔。
 
「水行が趣味で」

 さらにポーカーフェイス。
 お願いだから、諦めてください。

「何言ってんだ? 風邪引くぞ?」

 ――あぁああ、通用しない!

 ぐっと腕を掴まれた。

「放っておいてくれませんか。一人で戻れるので」

 意地でも上がれない私。
 本当に心臓がはち切れそう。

「あんまりおかしなこと言うと怒るぞ? 黙って、こっちこい!」
「わっ!」

 抵抗虚しく、びしゃびしゃのままで私は晩くんに引き上げられた。

「見ないでください……!」

 自分の身体を隠すより、晩くんの両目を隠すほうがすべてを隠せると思って、私は瞬時に彼の両目を両手で塞いだ。

 そして、それと同時につい反射的に言ってしまって、私はしまったと思った。

「もしかして、お前……」

 私に両目を隠されたままで、晩くんは呟いた。

 お願いだから、言わないでほしい。

 そんな私の願いは届かず……

「人間なのか?」

 晩くんはそう言った。

 ――何か、隠し通す何かを言わなきゃ……。でも、何を?

 私は考えるために沈黙を作ってしまった。
 それがいけなかった。

「人間なんだな?」

 もう一度言われて、それでも上手い答えを見つけられなかった。

 それは私が人間だと認めるということ……。
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