天使と悪魔の学園へ、ようこそ! ~男装地味子の絶対バレてはいけないヒミツ♥~
頑張ったのに風邪を引きました!
「貧乏人とは遊ぶな! 貧乏がうつるぞ!」
『なかよし』と名前がついた公園に足を踏み入れた瞬間、私を知っている子たちは叫びながらみんな逃げ出した。
貧乏なんてうつるわけがないのに……。
学校でも外でも私はいつも一人だった。
砂場で一人、いつも山を作って、穴を掘って――
「……くん」
声が聞こえた。
眠りの世界以外からの声。
「雪くん」
寝起きのぼんやりする視界に光くんの綺麗な顔が映り込む。
「光くん……?」
私の喉、ガラガラ。
それにすごく熱い。
――ああ、そうだ……、私、オリエンテーション合宿から帰ってきて、風邪引いて熱出したんだった。
「雪くん、大丈夫?」
心配そうに私の顔を覗き込む光くん。
「……光くん、……どうして?」
どうしてここに居るんだろう。
私、みんなに悪いと思って学園の保健室で寝てたのに。
ここ、光くんの部屋だ。
「あんなところで寝てて、自分の弱ってる姿を誰彼構わず見られるのは嫌だろう?」
誰彼って、学園はお休みの日だから、誰もいなかったんだけど……。
保健医の先生も誰も。
「悪魔組に加護はないし、僕と灯だったら、僕のほうが治癒の加護は強い。それに僕には中堂もついてるし」
そう言いながら、光くんが私のおでこに熱冷ましのシートを貼ってくれる。
それから、ちらっと寝室の扉のほうを見た。
今日は閉まってる。