天使と悪魔の学園へ、ようこそ! ~男装地味子の絶対バレてはいけないヒミツ♥~
◆ ◆ ◆

 あれから一週間が経った。

「きゃー! 東条様と朝比奈様よ!」
「本当にお似合いのカップルよねー!」
「まさに漆黒のお二人……、お美しいわ……」

 廊下を歩いていて、聞こえてくるその名前につい視線を巡らせてしまう。

 ――あ……。

 少し離れたところを正面から歩いてくる晩くんと目が合った。
 変わらないクールな漆黒の瞳が私を見つめている。
 もう関わっていないのに、どうしてそんな風に私を見るの?

「……ぁ」

 隣を歩く朝比奈さんの視線に気が付いて、私は晩くんから目を逸らした。
 そのままですれ違う。

 でも、いま二人がどうなってるのか、どうしても気になってしまった。

「……っ」

 足が勝手に来た道を戻る。
 追ってはいけないと思うのに、二人の後を追ってしまって……、私、何してるんだろう。

 少し先で二人が空き教室に入っていくのが見えた。
 足音を立てずに近付く。

 ちょっとだけ覗くつもりで廊下側の窓から中を見たら、何か力でも使ったのか、朝比奈さんと目が合って動けなくなった。

 晩くんは私に背を向けて座っていて、気が付いていない。

「わたくし、飽きてしまいましたわ」

 わざとなのか、少し開いた扉から中の声が聞こえた。

 晩くんに話しているのに、まるで私に向かって話してるみたい。
 視線が合ったまま、逸らせない。

「どういうことだ?」

 静かな声だった。
 怒ってるとも焦ってるとも違う晩くんの声。
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