天使と悪魔の学園へ、ようこそ! ~男装地味子の絶対バレてはいけないヒミツ♥~
雪が人間だとしても ~Side京極 闇~
「俺はお前たちを信じてる」
生徒会のメンバーしか入れない寮、そのエントランスに集められたオレたちに晩は言った。
「あいつのために、ずっと言わないでおこうと思っていたが、いま、またあいつが危機にある」
晩の話している『あいつ』が雪のことを指していることはすぐに分かった。
光も灯も分かってる。
「あいつは……」
言葉に詰まる晩なんて初めて見た。
悪魔らしくいつだって冷静で、冷たすぎるくらいの晩が言葉を探してる。
静かな空間に息を吸う音が聞こえた。
「――……あいつは人間だ。A組の朝比奈がその秘密を知って、密告しようとしている」
悩んだ末に口にした言葉。
晩にしては珍しいその険しい表情が、ことの重大さを物語っていた。
「朝比奈は自分が俺と付き合うことと、あいつが生徒会に関わらないことを条件に密告を取りやめた」
だから、雪はオレたちから離れたのか。
オレはバカだ。
雪が悩んでることにも気付かないで。
「だが、彼女は俺に飽きたらしい。次はお前たちを、と」
複雑な表情で晩が唇を噛む。
それから、オレたちを順番に見て
「頼む、力を貸してくれないか?」
深く頭を下げた。
晩が人に頼るなんて珍しい。
それくらい雪を大切に思ってるってことだよな。
オレだってそうだ。
雪にいなくなってほしくない。
「もちろんだ。雪のためなら、オレだって」
雪は男だけど、オレが守りたいんだ。
正直に言うと惚れてる。
素直な表情を見た瞬間から、ずっと。
「ボクだって、なんだってする」
いつもは甘い顔してる灯もいまは凜々しい顔をしてる。
「僕も雪くんのためなら、この身を捧げるよ」
光のこんな顔も初めて見た。
天使の中の天使みたいなやつなのに、決心した顔は男らしい。
「礼を言う。――お前たちを信じてるぞ」
もう一度そう言って、晩は寮の扉を開け放った。
光、灯、オレと続いていく。
夕方の光がまぶしい。
――雪が人間だとしても、俺は密告しねぇし、絶対に守ってみせる。