魔女狩りの世界の果てで、あなたと愛を歌おう
◆◆◆

 授業が終わり、中休みの二十分分休憩。

 大上くんは男女問わず、大勢に囲まれていた。



「リヒトぉ、オマエ、初日から反省文ってすげーよ。
あ、おれ、佐野サトシ。サトシでいいよ」



 苦笑しつつ、佐野くんがあいさつした。

 深緑の髪をした、男子のリーダー的存在の子だ。

 サッパリとした性格の、気配りのできる優しいイケメン。



「てか、魔女に『美人』とか……。
信じらんなーい。マリカ、ビックリしちゃった」



 おおげさな手振りをしているのは、五十嵐マリカ。

 薄ピンクの髪をカールさせて、校則違反のメイクもバッチリしている。

 それなのに先生に注意されないのは、
 クラスの女王サマである五十嵐さんを怒らせたら、
 やっかいなことになるとわかっているからに違いない。

 わたしは本を読んでいるフリをしながら、大上くんの様子をうかがっていた。



「う~ん、おれがいた島には、外国人はいても、魔女はいなかったからなあ」

「え、マジで」

「そうなんだ」



 大上くんの言葉に、周りがざわつく。



「おれの島では、魔女監視教育よりもむしろ、
外国人に対しての注意の方が多かった。
だから、魔女って言われても、いまいちピンとこなくて」



あ~、と納得の声が教室中で響く。



「そっか。外国人が近くにいるとそうなるかー」



 うんうんと佐野くんがうなずく。
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