魔女狩りの世界の果てで、あなたと愛を歌おう

 でも、五月も半ばを過ぎた今は、
 梨田さんはもう空気みたいにあつかわれてる。

 初めて彼女がこの図書準備室に来た時のことは、今でも覚えてる。

 今年の四月のある日、
 わたしがお弁当を食べているとガラッと扉が開いたんだ。



「……えっ!」



 そう小さく叫んで、目を見開く梨田さん。

 おにぎりをかじる体勢で固まっているわたし。

 梨田さんは、どうしようって顔をしてた。

 そりゃそうだ、まさかこんなところに魔女がいるなんて。

 でも、覚悟を決めたようにきゅっと口元を引きしめると、
 梨田さんは室内に一歩足を踏み入れた。

 座ったのは、今いる席と同じところ。

 こうして、
 わたしたちふたりで黙々とお弁当を食べるという習慣が始まったのだった。

 ちら、と梨田さんを見る。

 小さな口をもぐもぐと動かして、タコさんウィンナ―を食べていた。

 いいなぁ。
 
 お母さんとかに、つくってもらったのかな。

 わたしはというと、コンビニのおにぎりと、サラダ。

 お弁当をつくろうと思ったこともあったけど、朝はわたし、ダメなんだよねぇ。

 しばらくして、わたしも梨田さんもお弁当を食べ終わった。

 いつもなら、梨田さんは読書タイム。

 わたしも、昼休みが終わるまでシンガールのミミと曲づくりに入るんだけど……。

 今日は、いつもと違った。



「お? ここ、鍵かかってないのか?」


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