魔女狩りの世界の果てで、あなたと愛を歌おう
1.金色のオオカミ
はっと目が覚めた。
どうやら、うたた寝をしてたらしい。
シートに座って、がたん、ごとんと揺られている感覚。
そっか、わたし、登校中だった。
寝ぼけた頭で、ここが電車の中だということを思い出す。
それにしても、おかしな夢だった。
金色のオオカミに名前を呼ばれて、一緒に歌おう、と誘われる夢。
カナ……。下の名前で呼ばれるなんて、久々だ。
「魔女」とか、「アレ」とか……。
よくて、苗字の「鳥居(とりい)」って呼ばれるのがほとんどだもんね。
それにしてもメルヘンだったなあ、と思わず苦笑する。
同時に、安心した。
あれは、「魔女の夢」じゃない。
わたしが、魔女の力をつかったわけじゃないんだ。
ちょっと体の向きを変えて、電車の窓を鏡がわりに自分を映す。
肩まである深い青色の髪は、そろそろ切りそろえたいと思っているところだ。
薄い水色の瞳は、まだ眠気が残っているのか、とろんとしている。
そして、何よりも確認したかったのが……、首元だ。
……うん、変わりないね。
首にしっかりとはめられた、罰の証(あかし)の黒い首輪。
わたしがしゃべろうとすると、この首輪はわたしの首をしめあげる。
それが、魔女への罰だから。
指でついっと首輪をなぞると、金属製のそれはひやりとしていた。
いつもと同じ感覚なのに、なんだか、心がじりっと痛む。
あの夢の中の温かさが、本当に幻なんだなってわかったから。