魔女狩りの世界の果てで、あなたと愛を歌おう
4.リヒトくんとの日常
リヒトくんが転校してきて二週間。
彼は、ちょくちょくわたしの周りに顔を出す。
どうやら、分厚い反省文……いや、もはや論文?
を書こうと思っているのは本気らしく、わたしについて回るのだ。
例えば、リヒトくんが転校してきたばかりのころ、こんなことがあったんだ。
◆◆◆
ある日の中休み。
教室でおなじみの読書タイムをしてた時のこと。
わたしが読んでいたのは、「ファッション★ミッション」。
この小説は、大人気でアニメ化もされている。
主人公が様々な衣装を着て、
いろんなミッション(課題や問題)を解決していくんだ。
お小遣いをためて、最新刊を買ったんだよね。
ただ、わたしが何を読んでるのか知られると
やっかいなことになるかもしれない。
ってことで、いつも本のカバーを自作してるんだ。
その時も、夢中で読んでいたのだけれど……。
「よ、カナ。何読んでんの?」
声をかけてきたのはリヒトくんだ。
当然、教室の空気がぴりつく。
わたしは机の中からノートをとりだした。
急いで、ボールペンで【ジャマしないで】とノートに書く。
「つれないこと言うなよ。
魔女って、どんな本読むんだ?
やっぱ、難しい、固い本?
『一般人』になじむ努力しろ、みたいなヤツ?」
ん~、まあ、固い本も読むよ。
それこそ、『一般人』に災いを与えた魔女についての本とか。