魔女狩りの世界の果てで、あなたと愛を歌おう
「だって……、おれも好きだし、この小説。
禁止はちょっと……」
クラスで「禁止はイヤ」派だった子たちが、うんうんとうなずき始める。
「じゃあ、サトシは、魔女と同じものが好きでも、おれたち一般人はそれでいいってことか?」
「……その言い方、ズルくないか?」
うらみがましい目で、佐野くんがリヒトくんをにらみつける。
「ズルくない。
……だって、こうでもしなきゃ、みんな真剣に魔女について考えないだろ?」
「魔女について、考える?」
佐野くんはきょとんとして、リヒトくんの言葉を繰り返した。
「そう。
……なんていうかさ、おれたち、
考えることをやめていることが多くないか?
『魔女』だから。『魔女に関するもの』は、全部悪。
そう、こりかたまってる」
教室がざわめく。
「おれは、魔女に対してどう思うかは、
各人の自由だと思う。
でも、考えることをやめたらさ、
流されるままの人生って、結構つまんないものだと思うぞ」
◆◆◆
そう言い切ったリヒトくんは……。
なんていうんだろう。
すごく、まぶしくて、……そうだ、「尊い」ものに見えた。
それと同時に、ハッとさせられたんだ。
わたしも……、考えるのを、やめてなかった?
魔女だから。
全部、わたしが悪いから。
だから、政府から罰をあたえられても、しょうがない。
でも、本当に全部わたしが悪いの?
……こんなことを考えていいかわからない。
まさに、これが魔女の思考なのかもしれない。
それでも。
リヒトくんの、
「流されるままの人生って、結構つまんないものだと思うぞ」
という言葉は、わたしの心にざくりと刺さった。