魔女狩りの世界の果てで、あなたと愛を歌おう
6.車内にて

 わたしは、後悔と申し訳なさで心が押しつぶされそうだった。

 教務室から移動してる時に、
 火野さんはなんてことないようにこう言ったのだ。



「ああ、そうえば。
シズカさんの容体ですが、
命に係わるようなものではないそうです。
過労からくるものとわたしは聞いています」



 それを聞いた時は、本当にうれしかった。

 もし、お母さんが死んじゃったら、
 どうしようって思ってたから。

 力が抜けて廊下に座りこんだわたしをよそに、
 火野さんは
「車を玄関前にもっていきます。
あなたたちは、教室へ荷物をとりにいきなさい」
と言って去って行った。



「よかったじゃん、カナ!」



 リヒトくんは、自分のことのようによろこんでくれた。

 わたしの背中をぽんっとたたき、



「よっしゃ、ここでちょっと休んでな。
おれ、オマエのも荷物とってくるから!」



 と足早に駆けていった。 

 その時、思ったんだ。

 わたしはいい。だって、お母さんが無事だったから。

 三年ぶりに、お母さんに会えるから。

 でも、リヒトくんは……?

 火野さんに、『教育』が必要だなんて言われて。

 わたしと一緒に、病院に行って、何をされるんだろう?

 魔女に友好的な人は、
 いつの間にかいなくなるって聞いたことがある。

 好意的な発言や政府を否定するような発言を
 どこかで盗聴されて、逮捕されるから。
 
 リヒトくん……、逃げた方がいいんじゃ?
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