魔女狩りの世界の果てで、あなたと愛を歌おう
いや、でも、魔女であるわたしを
「友だち」と言ったことを、
すでに監視士である火野さんに聞かれている。
逃げるのは、悪印象だ。
じゃあ、どうすれば……。
何も考えが浮かばないまま、
リヒトくんは荷物をとって戻ってきて、
火野さんの車に乗りこむことになった。
火野さんが車の助手席に荷物を置いたので、
わたしとリヒトくんはふたりで後部座席に乗る。
学校から御声病院までは、車で二十分くらいだ。
車内は、リヒトくんの明るい声が響いていた。
「過労っていっても油断はできないけど……。
命に別状はないってのはよかったな!」
わたしは力なくうなずく。
「ん? どうした?
やっぱりまだ母さんの容体が心配か?」
ふるふる、と首をふって否定。
「じゃあ、どうしてそんなに暗い顔してんだ?」
じっとリヒトくんの顔を見つめる。
どうすれば、伝わるんだろう……。
わたしはカバンからノートをとりだして、
シャーペンで「友だち」と大きく字を書いた。
それを見て、リヒトくんはうれしそうにうなずく。
でも、わたしは……。
その「友だち」の字の上から、大きくバツ印を書きこんだ。
何度も、何度も。
バツ印で「友だち」の字が見えなくなるまで、
ぐじゃぐじゃと書きこむ。
友だちじゃない。
友だちなんかじゃない。
力をこめて、否定、否定、否定。
「ちょ、カナ、ストップ」