魔女狩りの世界の果てで、あなたと愛を歌おう

 リヒトくんにとめられた時には、
 もう友だちという字は塗りつぶされて、
 まったく見えなくなっていた。



「……、これが、カナの意思ってこと?」



 静かに問いかけるリヒトくん。
 わたしは小さくうなずいた。



「……そっか」



 リヒトくんはぽつりとつぶやいた。

 ……ウソだ。

 ほんとは、友だちって言われてうれしかった。 

 でも、これはリヒトくんを守るため。



「な、ちょっと消しゴム貸して」



 ? なんだろ?

 言われた通り、消しゴムを差し出すと、
 リヒトくんは黒一色になったノートの上に、消しゴムを滑らせた。

 ……何をするつもりだろう?

 真っ黒だったところが消しゴムでなぞられて、消えていって……。

 ……あ!

 黒を背景に、白い文字で、「友だち」があらわれた。



「また気持ち、ぬりつぶしてもいいよ。
おれ、こうやって、何度でも浮かび上がらせるから」



 リヒトくんは不敵な笑みを浮かべていた。

 どきん。

 心臓が、大きな音を立てた。

 どきん、どきん。

 うれしくて、うれしくて、たまらない。

 じわじわと胸から体中に温かさがめぐっていく。

 隠されたわたしの本当の気持ち。

 リヒトくんは、それを何度でも見つけてくれるってことだよね。

 そういうリヒトくんのあったかくて、
 思いやりのあるところ、好きだなあ。

 ……。

 え? あれ? わたし……。
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