魔女狩りの世界の果てで、あなたと愛を歌おう
◆◆◆
ある日、何がきっかけだったか忘れたけど……。
お父さんが、教えてくれたんだ。
わたしがまだ幼稚園にあがる前の時のことを。
その日は、わたしの誕生日だったんだって。
リビングダイニングで、
たくさんのごちそうを食べて……、いよいよ誕生日ケーキ!
そのケーキは、お父さんが冷蔵庫からとってくることになってた。
テーブルから冷蔵庫まですぐだし、普通は何の心配もないよね。
ただ、お父さんが、
おどけて「ジャーン!」と片手でケーキの箱の下を支えて
持ってきたのが失敗だった。
ずるっとケーキの箱がお父さんの手から滑り落ちて……。
べちょ。
無残にも、ケーキの箱はひっくり返った形で床に落ちた。
わたしは何もリアクションを起こさなかった。
泣くことも、怒ることも。
ぶっちゃけ、わたしはちっちゃすぎて、
何が起こったか理解してなかったんだよね。
「うわ! ごめん! 本当にごめんな、カナ!」
お父さんが謝っても、わたしはきょとーんとしてたらしい。
でも、わたしの代わりに大声を上げた人がいた。
「うわあああん!」
大粒の涙を流して、お母さんが泣き出しちゃったんだって。
お父さんは、大あわて。
「ごめんな、食べ物を粗末にして」
「ち、違う!」
「えっ……。
その、せっかくキミが注文して、
買ってきてくれたケーキだったのにな」
「違う!」
「ええっ!
その、おれが、おどけて失敗したから、怒ってるのか?」
「それも違う!」