魔女狩りの世界の果てで、あなたと愛を歌おう



「あの人たち、度胸試し?」

「魔女には近寄らない方がいいのに……」 



 周りの乗客から、ひそひそとそんな声が聞こえる。

 制服で、
 わたしが御声(みこえ)第五中学の生徒だってことはみんなわかってるはずだ。

 降りる駅が近いことも。



「次は、御声第五中学前~」



 アナウンスが流れる。

 このままじゃ、乗り過ごしちゃう!

 あせりで、頭がかあっと熱くなる。

 それでも、わたしは必死にどうするか考えた。

 ……あ、そうだ。

 急いでスマバンでスタンバイしてるミミに指示を出し、タップする。

 ボリュームを最大に上げて……。

 ミミ、頼んだよ!



『降ろしてください!』



 電車内に凛としたミミの声が響きわたる。

 目の前にいた男性ふたりは、ぎょっとした顔をした。

 わたしが、魔女が意思表示して驚いたんだろうね。

 それでも、意地になっているのか、
 目の前のふたりは難しい顔をしたまま動こうとしない。

 わたしの両隣の人たちもそうだ。

 うう、どうしよう。

 もう一度、ミミに頼む?

 でも、それでも動いてくれなかったら?

 ドクドクと心臓が嫌な音を立てる。

 その時だった。



「おーい、お兄さんたち、その子『降ろして』って言ってるよ」



 少年の声が聞こえた。

 甘くて、不思議と落ち着く声。

 ……?

 どこかで聞いたような?



「ほらほら、ちょっと失礼。どいてくださーい!」



 目の前のふたりの男性の間から、にゅっと手が出てくる。
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