魔女狩りの世界の果てで、あなたと愛を歌おう

 お父さんいわく、
 『ケーキをめちゃくちゃにされたカナがかわいそう、
 って責められた方が、よっぽどわかりやすかった』
 だって。

 でも、同時に思ったんだって。

『ああ、この人は……お母さんは、
カナのために本気で泣くことのできる、
思いやりのある人なんだ』
ってね。




◆◆◆



 きらめく大切な思い出を思い返したはいいけど……。

 どう、リヒトくんにつたえようかな。

 お母さんの人柄、かあ。 

 ノートにすらすらっとシャーペンを走らせる。



【わたしのために、本気で泣いてくれる優しい人】



 うん、これだ。

 ぱっとノートをつきつけると、リヒトくんは字を目で追って……。



「そっか。いいじゃん。自慢の母さんだな」



 と、ほほ笑んでくれた。

 わたしは、うれしくなってこくこくうなずいた。

 今度はひざの上にノートを移動させ、文章を書きだす。

 うう、リヒトくんがわたしの肩越しに
 のぞきこむかたちになって、ドキドキするよ。



【だから、早く会いたい】

「そうだな」



 そんな会話をしていた時だった。



「ふたりとも、シズカさんが目覚めましたよ」



 火野さんが、呼びに来てくれた。

 とうとう、お母さんと会える。話が、できるんだ。

 うれしさと……、少しの不安。

 それを抱いたまま、わたしとリヒトくんは病室に向かった。
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